2009年 08月 16日
大阪漂流7章〜過去を辿る〜 |
大阪中心部から30分ほど、急行電車に揺られると、西宮駅に着く。
隣の甲子園駅とは違い降りる人も少なく、駅の周りにも市役所以外、これといって大きな建物もない。
実際に訪れるまでは、もっと大きな駅だと思っていたので、その小ささに拍子抜けした。
私が西宮駅を訪れたのは、近くにあるはずの朝日新聞阪神支局に行くためだった。昔、襲撃事件があったところである。
事前に調べたが、住所と最寄り駅しかわからず、駅員さんに道を聞いた。
「あー、朝日新聞ね。近いよ。エスカレーター下って、道に出て真っ直ぐ。すぐそこ。」
幸運なことに、近いようだ。
教えてもらった道を行く。しばらくすると、数十メートル先に朝日新聞の旗が見えた。建物の前には、日傘をさした老夫婦が立っている。
あの人たちも、私と同じだろうか。
そんな思いを抱きながら、建物の前に着いた。
老夫婦は行ってしまった。
レンガ作りの立派な支局だ。建物は事件から建て直されてるようだ。ガラス張りの玄関に、防犯カメラ。カメラは、事件があったからだろうか。
支局に資料室が併設されていると聞いてきたものの、扉には鍵がかかっている。
しまった…。迂闊なことに、今日は日曜日だったを忘れていた。支局は当然休みだし、資料室にも入れないようだ。
帰ろうかと思ったが、諦めきれず、インタフォーンを押す。
受付と思われる女性が声で応対してくれた。
資料室は支局の上の階にあるそうだ。普段は一般公開しておらず、平日のみ見学可能。事前に申請が必要で、支局長の許可がいるらしい。
もっと、調べておけばよかったと思う。
あの老夫婦も同じように残念な思いをしたのだろうか。
電話で確認しなかったという悔いが残る。旅の準備は用意周到にするべきであった。
また次の機会があれば、必ず予約をしよう。
そう考え、丁寧に教えてくれた女性にお礼を言い、支局を後にした。
帰り際、改札で道すがらにお世話になった駅員に話しかけられた。
「見つけられたやろうか?」
「はい。ありがとうございました。でも、平日じゃないと入れませんでした」
「そりゃ、残念やったなー。あそこ、昔事件あったとこやろー。場所は知ってるけど、あんま行く人もおらわー」
どうやら、普段訪れる人はほとんどいないようだ。
来る人も少ないから、資料室もあまり公開されていないかもしれない。
だいぶ昔の事件だし、場所が場所で住宅街の中にあるから、無理はない。
近くの甲子園と比べれば、セミもいないし、静かすぎるくらいだ。
ただ、改札のおっちゃんは事件のことも、場所も知っていた。
そう言えば、あの老夫婦も事件のことを知っていたから、来たはずだ。
今となっては、多くの人が忘れ去りそうな過去かもしれない。
でも、忘れてはいけないと思う。
それに、改札のおっちゃんや老夫婦のように、覚えている人がいる限り、あのような事件があってはいけない。
by matsuyama-nagoya
| 2009-08-16 16:24